大観覧車さんからの誕生日プレゼントSS♪

ここは今の世界とは別の異世界。
おさるのうめきちは、時空のゆがみを生じさせる「鉄骨娘は今どこで何をしているの?」
という流れに飲み込まれ、この異世界にまぎれ込んでしまった。
異世界から元の世界に戻るには「魔宝」を集めなければいけないと知り、この異世界で
知り合った仲間たちと共に魔宝探しの旅を続けていた。
そして7月6日の朝がやってきた……。


――チュン、チュンチュン…

「ふぁ〜あ、よく寝た。もう朝かぁ」
魔宝のありかへ向かう途中の宿場町に泊まっていたうめきちは心地よい朝を感じていた。
しかし、その心地よさを吹き飛ばされてしまう出来事が起こっていたのだ。
「ちょっと、ちょっとぉ、大変よ」
いきなりそんな声をあげてうめきちの前に現れたのは、妖精兼異世界案内人のフィリーであった。
黙っていれば相当可愛いのだが…というのがうめ吉のフィリー評である。
「どうしたの、フィリー。そんなに慌てて」
「…いないのよ」
「へっ?」
「あとの3人がどこにもいないの!!」
3人とは、うめきちが元に世界に戻るための魔宝探しを手伝ってくれている楊雲、若葉、アルザの事である。
「いないって…どうして?」
「そんなの知らないわよ。とにかくいないものはいないのよ」
「とりあえず探してみよう」
「探すって言ったって…何か心当たりはあるの?」
「ないけど…放っとくわけにもいかないよ」
「そうね。とにかくこの辺りを探してみましょうか」
うめきちとフィリーは泊まっていた宿をはじめ、町のあちこちを探した。しかし楊雲ら3人は
どこにも見あたらない。
「いないわね」
「うん、本当にどうしちゃったんだろう」
二人が考え込んでいると、
「おい、キサマ」
「うわっ!カイル!」
自称誇り高き魔族、カイル・イシュバーンがうめきちとフィリーの前に現れた。
魔宝の力で魔王を復活させるというとんでもないことを考えて、うめきち達と同様に旅をしているのである。
「悪いけど、こっちは忙しいんだよ。仲間がいなくなって探して…」
「何、キサマの仲間もか?」
「ってことは、カイル、あんたの仲間もいなくなったの?」
「ああそうだ。今朝オレが目を覚ますとすでにいなかったんだ」
「あんたの場合、仲間に愛想尽かされたんじゃないのぉ?」
「ええい黙れ黙れ!そんなはずは決してない。そういうキサマの方こそ逃げられたのではないのか?」
「そんな訳ないでしょ。うめきちは仲間を凄く大事にしてるんだから」
フィリー、たまには良いこと言うね」
「たまにはって何よ。せっかく誉めてあげたのに」
「ごめんごめん、冗談だ代フィリー」
「おい、漫才はそれくらいにしろ。それより心当たりはないのか?」
「漫才じゃないわよ、もう。バカにしないでよね」
「まぁまぁ、フィリー。とりあえずこの近くにはいそうにないと思うよ、カイル」
「キサマの探し方が生ぬるいのではないのか?もう少しこの辺を探した方がいいんじゃないか?」
という感じでもう一度仲間を探しだすうめきち達。しかしやはり見つからなかった。
いつの間にか太陽は真上に上がり、お昼過ぎになっていた。

「ちくしょう、一体何処に消えたんだ」
「本当。何処にいるんだろう、みんなは…」
長時間食事もとらず仲間を探し続けて、うめきち達はすっかり疲れ果ててしまった。
「ねぇフィリー。ロクサーヌなら何か知ってるんじゃ…」
「でもロクサーヌが何処にいるかも分からないのよ」
「あ、そうか…」
「いざって時に役に立たないのよね、ロクサーヌは」
「じゃあカイルの水晶球には写ったりしないの?」
「そんな事はできん。あれはあくまで魔族と連絡を取るためのものだ」
全くどうしようもないといった感じになってしまったうめきち達。しばらく力が抜けたのか
座り込んでいたが、フィリーがこんな一言を発した。
「ところでレミット達はどうなってるんだろ」
「そういわれてみれば…」
「フン、今はあのガキのことより自分達のことを考えるべきだ」
とカイルが口走った直後に、
「あの、すみません」
「ア、アイリスさんじゃないですか」
現れたのはレミットの侍女のアイリス・ミールであった。

「どうしたんですか?」
「大変なんです。姫様とお連れの皆さんが、魔物にさらわれてしまったんです!!」
「ええっ、なんだって!」
「さらわれたの?」
「それは一体どんな魔物なんだ?」
カイルが尋ねた。するとアイリスは、
「え、えと、その…とにかく凶暴そうな…」
と、何となくあいまいな返事だ。
「姫様を助けてあげて下さい、お願いします」
「わかりました。行こう、フィリー」
「行くのはいいけど、一人でどうやって魔物と戦う気なの?」
「きっと大丈夫ですよ」
そう言ったのはアイリスだ。
「え?でもさっきは凶暴そうだって…」
「えっ、私、そんなこと言いました?」
「何かあやしいな。よし、このオレも行こう」
「本当ですか?これは好都合……いえ、助かります」
「好都合ぉ?」
「い、いえ、何でも。では行きましょう」
そんなこんなでアイリスに案内された先は、町外れの教会であった。
「ここに魔物が立てこもっているのか?」
「は、はい」
「よし、行こう、カイル」
「待て、魔物などオレ一人で十分だ。キサマはそこでオレの素晴らしい戦いぶりを見学でもしてろ」
「そ、それは困ります。お二人一緒に入っていただかなくては!」
「アイリス、あんたやっぱり何か隠してるでしょ?」
すかさずフィリーがツッこんだ。するとアイリスは観念したように、
「すいません。姫さま達が魔物にさらわれたというのはウソなんです」
「何だと?」
「どうして?一体何のためにそんなことを?」
「それは…とにかく中に入っていただければわかります」
「わかった。カイル、行ってみよう」
「ああ、仕方ない。行ってやるか」
ついに二人そろって教会の扉を開けた。その瞬間、

――パン!!パン!!パパン!!
「うめきちさん、カイル、おたんじょうびおっめでとー!!」
大きなクラッカーの音と共にみんなの声がこだました。
その中には楊雲、若葉、アルザといったうめきちの仲間はもちろん、カイルの仲間やレミット達もいた。
「み、みんな…」
「お前たち…」
うめきちとカイルはしばし呆然としてしまった。そこにレミットが声をかける。
「何ボーっとしてるのよ。あなた達の誕生日パーティーなんだから喜びなさいよ」
「実は姫さまが企画したんですよ、このパーティーは」
「アイリス!それは言わないって…」
「そうだったの、ありがとうレミット」
「まぁ、礼は言っておこう」
「いいとこあるじゃない、あんたも。初めて王女らしさを見せたわね」
「ううう、うるさいわね!」
「まぁまぁ姫さま。さぁそれより早くはじめましょうか」
そのアイリスの一言で、パーティーは始まった。
「うめきちさん。このケーキ私が作ったんですよ」
「え…若葉が!?」
一瞬うめきちの脳裏に悪夢がよぎった。
「…大丈夫ですよ。アイリスさんが一緒でしたから」
「そうや、うちもつまみ食いしたけど平気やったで」
楊雲とアルザが笑顔でささやく。
「でもみんながいなくなって、本当に心配したよ」
「すみませんでした。あのレミットさんが強引に決めたことだったので…」
「まぁまぁ、無事だったからええやん。ほらほら、他の料理もうまいで。カレンとウェンディが作ったんや」
「ふーん、そうなんだ」
うめきちはカレンとウェンディを見た。メイヤーも含めた3人がカイルを祝福していた。
カイルもまんざらではないようだった。

パーティー開始から1時間ほど経ち、みんな一息ついたようにリラックスしている。
ただ一人アルザは未だに食べ続けているが…。
うめきちも少し休んでいた。そこに、
「うめきちさん」
「ああ、楊雲。どうしたの?」
「ちょっと、外に出ませんか?」
「う、うん、いいよ」
うめきちと楊雲は教会の外に出た。辺りにはいつの間にか綺麗な夕焼け空が広がっていた。
「綺麗だね、楊雲…」
「ええ…」
「そう言えば楊雲は夕涼みが好きだったよね」
「ええ、綺麗な景色を見ると心が落ち着くんです。でも…」
「でも、どうしたの、楊雲」
「でも今日はどきどきして落ち着きません。うめきちさんと一緒だから…」
「や、楊雲…」
「私、うめきちさんとこうして二人きりで夕涼みをするのが夢だったんです」
「そ、そうだったんだ」
「これからもずっと、うめきちさんのおそばにいたいです。うめきちさんが好きです」
楊雲は、夕日を浴びて更に頬を赤くしていたが、しっかりとこう言いきった。
うめきちは楊雲の自分への強い想いに応えるように、
「楊雲、大好きだよ。これからもずっと一緒だよ」
「うめきちさん…嬉しいです」

うめきちと楊雲は夕日が沈んだ後もしばらくきらめく夜空を眺めながら幸せなひとときを
過ごしたのだった。この幸せな時間はきっとこれからも永遠に続いていくことだろう。




・なんとか間に合って今はほっとしています。ネタは前から考えていたのですが細かい部分が
ちょっとうまくいってない気もしますが… エタメロの主人公は男で、うめきちさんは女性です。
セリフはどんな感じにしようかと考えましたが、あからさまに男じゃないけど、どっちともとれるような
セリフを多用しまいたがいかがでしょうか?
今頃2人で氷あずきをなかよくたべているのでしょうかねぇ。
(G’s8月号みましたよ、おめでとうございます) 
(大観覧車さんからのコメント)


7月6日はわたしの誕生日、そしてエタメロのカイルの誕生日でもあります。
大観覧車さんはその事を覚えていて下さり、かつ7月6日に届くように手紙にてこのSSを
送って下さったのです(感涙)各キャラの特徴をバッチリ掴んだほのぼのとしたストーリー、
しかも楊雲とラブラブにしてもらっちゃってて〜うひょひょ〜もうにやけ笑いが止まりません〜(萌)。
わたしはゲーム中は完全に男になってるので、男だと思って書いていただければいいんですよ(笑)
(っていうか、その方がいい) でも口調は穏やかな方が好きなので、この主人公はいい感じ♪
ただ、実際のわたしとはかなりかけ離れてますが(笑)
掲載許可を頂いてから随分経ってしまい、申し訳ないです…(汗)
とにかく大観覧車さん、本当にありがとうございました!



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