はじめての戦闘
(Eさん・作)



ルイーダの酒場で戦士、武闘家、僧侶を仲間にした勇者は初めてアリアハンから出た。
すると直ぐに彼等の前にモンスターが現れた。
「スライムだ!!」
「た、たたたたたた戦う!?」
「勇者様、たが大杉漣です!!」
「二人共落ち着け戦うんだろ?…ん?勇者ー、俺何も装備してないぞ?」
「忘れてた!!戦士は鋼の剣を装備して」
「オレは武闘家だから素手で大丈夫だやれる!!…殴ってくるっ」
「はいっ」
「我が筋力の餌食になれっ!!―スイングレフトローリング!!」
「技みたいに叫んだけどただのパンチ!?」
思わず突っ込む戦士の後ろで僧侶も行動を決める。
「私も装備してないのですが脚力を生かして蹴ってきますっ」
「僧侶ちゃん装備しよう?」
「えーと、我が脚力の餌食になれーっ!!―ジャンピングレッグ!!」
「こっちも技みたいに叫んだけどただの飛び蹴りだ流行ってるのかコレ!?」
戦闘そっちのけで突っ込む戦士の横では勇者が「装備…」と言っているが全員がスルーしている。
「やるなぁ僧侶、さすがオレの弟子」
「ありがとうございます」
「武闘家レベル1で既に師匠!?ていうかいつの間に僧侶は弟子入りしたんだ!?」
「突っ込んでないで今の内に戦士だけでも装備を…」
そこにスライムが飛び掛かって来た!狙いは前衛の戦士だ。
「危ない!!」
「痛たたっ…て、痛いっ!痛いんだよっ」
べしっ!!
「「「あ」」」
「やべ、つい素手で反撃しちゃった…」
「聞いてぇぇっ」
勇者はついに泣き出した。




「…やっと…倒した…」
泣きながら肩で息をしている勇者に、へたり込んだ戦士が遠い目をした。
「スライムって噛みつくんだなぁ…知らなかったよ」
「スライムに噛まれた位でビビったのか?」
「吃驚しただけだよっ」
前衛でダメージを受けた戦士に比べ武闘家はダメージが少なかったので通常仕様だ。
勇者が二人のやり取りをボンヤリと見ていると、僧侶がとてとてと駆け寄り話し掛けてきた。
「勇者様大丈夫ですか?回復呪文かけましょうか?」
「擦り傷だけだし、大丈夫だよ」
「ホイミっ」
「ありがと…でも人の言うことはちゃんと聞こう?」
前途多難な先行きを案じ、勇者はため息を吐く。すると、
ナデナデ
「!?」
僧侶が手を伸ばして頭を撫でていた。そして、硬直する勇者にニッコリと微笑んだ。
「大丈夫ですよ?」
僧侶の微笑みはホイミより勇者に効いた。
「MP残り1ありますから」
「それ全然足りてないよ僧侶ちゃん!?」
「え?これホイミ後1回って意味じゃないんですか!?」
僧侶の天然による痛恨の一撃に、勇者は崩れ落ちた。
ツッコミ体質な戦士、ある意味武闘家らしい武闘家、とっても天然な僧侶…。
バラモス討伐は、遠い。
――いや、まだ始まったばかりだと勇者は首を振った。立ち上がり、仲間達に告げる。
「回復しないといけないから、今日はもう戻ろう」
そして立ち止まってる暇なんかないんだ、と歩き出した。
「はい勇者様」
「疲れたー」
「ん?勇者殿、アリアハンは逆方向だぞ?」
「あれ?」
勇者は方向音痴だった。
…バラモス討伐は、もう少し遠い。


またしても、ボツにしていたというお話を提供して頂きました!
Eさんの、超天然僧侶ちゃんと苦労人な勇者くん大好きですvv
さらっと「大杉漣」が出てきたのには吹きました(笑)
武闘家の大仰な技名に続く僧侶ちゃんの技もナイスです!
そして…な、ナデナデ〜!!萌え転がりましたvvそりゃホイミより効きます!
MP1をホイミあと一回と勘違いする大ボケぶりも可愛すぎます僧侶ちゃん!!
Eさん、笑って癒されるお話ありがとうございました♪

(16/7/24)

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