Memory Of Purewhite
(彩川りんなさん・作)


「こうやって二人でいるのは久しぶりだね。」
セリスは、傍らのラナの横顔を覗き込む様に見つめてそう言った。
「そうですね。」
ラナもセリスの方を向いて笑顔を返した。
「ねえ」
「はい?」
「ずっと、付けていてくれてるよね、その髪飾り。」
そう言われて、ラナは、いつも髪に付けている、白い髪留めにそっと触れた。
「セリス様に買って頂いた、大切なものですから。」
小さな頃に、ラナに贈った髪留め。
それは、白く、シンプルなもの。ラナのボリュームある髪を、耳のあたりでふたつ、
両方に留められて飾られている。
小さかったセリスが、ラナのために何か贈りたくて、必死になって考えて、
街の市で見つけてきたものだった。
覚えてる?そう、覚えてる―――――

「ねえラクチェ、女の子って、何をプレゼントしたら喜んでくれるのかなあ。」
「え?・・・あ、そっか。ラナの誕生日ですもんね。」
「え、う、うん。・・・よくわかったね、僕がラナのプレゼントのことを聞いて
るって・・・。」
ラクチェはにぃーっと笑っている。
「ラナは、どんなものが欲しいのかなあ。」
「うーんと、ラナは趣味が女の子だから、可愛い物かなあ。」
「そうか!そうだね。女の子らしいものだね。
・・・どんな、ものかなあ・・・。」
「あたしもよくわかんないですけど・・・。」
「セリス様、ラクチェに女の子の趣味聞いても駄目ですってー。」
横から、デルムッドやレスターが、いたずらっぽく笑いながら言う。
「なーんですって!?」
「うわぁっ」
そのまま、追いかけっこがはじまってしまった。
「女の子らしい、かわいいもの・・・かぁ。」
セリスは、とりあえず市場へ行ってみようかな・・・と、思ったそのとき。
「あ、セリス様。」
「ラナ!?」
なんとなくびっくりしてしまうセリス。
「どうしたんですか?」
微笑むラナ。
そのラナの手は、ボリュームある金の髪が顔の方へ流れてくるのを邪魔そうに押
さえたりしている。
それを見たセリスは、あ・・・!と思った。
そうだ、かわいい髪留め。
我ながら良い考えだと思って、嬉しくなるセリス。
「セリス様?」
不思議そうに心配そうに、セリスの顔を見ているラナ。
「あ、なんでもないんだ。僕ちょっと用事があるんだ。後で、会おうね、ラナ!」
「あ、はい。」
セリスは駆けていった。ラナはきょとんとしていた。

市場へ来たセリス。だがなかなか、これというものがなかった。
どんなものなら似合うかな。
ちょっといいなと思ったら、いい値段だったり、なかなかセリスの心を掴む
髪留めはない。
もともとそんなに沢山予算があるわけでもない。
「髪飾りって、以外と高い物なんだなあ・・・。」
セリスはひたすら、市の中を歩き回っていた。

「ねえラクチェ・・・セリス様、帰っていらっしゃらないわ・・・。どこへ行ったのかしら。」
ラナは、夕焼け空を見ながら、帰ってこないセリスの心配をする。
「んーとね・・・きっと悩んでるのよ。」
「え!?」
「あ、えっと、なんでもないよ、ラナ。あははー。」
ラクチェは誤魔化して笑っている。
だが、ラクチェの言葉から、別の心配をし出すラナ。
「セリス様・・・何か悩みが・・・。」
「あーちがうちがう。そーじゃなくて・・・。」
「何か知っているの?ラクチェったら。」
ラクチェは目線を浮かせながら、少し考えると、
「いいことあるから、待ってなよ、ラナ!」
そう言って、剣の稽古をするとばかりに行ってしまった。
「・・・??」
ラナは、目をぱちくりさせていた・・・。

セリスはなかなか帰らなかった。
ラナもう心配で、玄関に立ってずっと待っていた。
夕暮れが、なんだか不安にさせる。心配って、そういうもの。
「あっ・・・」
そのとき、ラナの瞳に、青い髪の少年が嬉しそうに走ってくる姿が見えた。
「あ!ラナ!ラナっ!!」
「セリス様一体どこへ・・・」
ラナの言葉が最後まで終わらぬうちに、セリスは息を切らせながら、
言いたかった一言を言った。
「お誕生日おめでとう、ラナ!」
そう言って、やっと買ってきた、包みをラナへ差し出すのだった。


「懐かしいですね・・・。」
二人は、そんな思い出に心をはせて、寄り添っていた。
「うん。なかなかね、無かったんだよ。ラナに似合うと思うものがね。
結局こんなシンプルなものを買って来ちゃった。
丁度夕日がこの、白い髪留めに反射してて、綺麗だったから
ラナの髪に付けたら綺麗だと思ったんだよ。」
「ありがとうございます・・・。」
「ずっと使っていてくれてありがとう。ラナ。」
そう、二人は笑顔で見つめ合っていた・・・・・。

(05/10/18)


彩川りんなさんのサイトでのフリーリクエスト企画にて、リクエストして書いて頂いた
『幼い頃の思い出を回想するセリス×ラナ』話ですvvとっても可愛い二人の思い出に
心温まりました!うほほ〜!!この頃から二人は絆とラブを育んでいたのですよっ(暴走)
さすがセリス×ラナ同士のりんなさん、ツボを心得ていらっしゃいますvv
そう、きっとあの髪飾りはセリス様からのプレゼントです♪
ああかわいいなぁ…かわいいなぁちくしょう(壊)

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