ウサギのぴょん子恋物語
あたしは恋するメスウサギでぴょん!


あたし、ウサギのぴょん子♪ ちょっぴりドジでキュートな白ウサギよ♪
え?ウサギに“ぴょん子”なんてベタベタすぎ? まだ「かえるのぴょん子」の方がまし?
うふふ、そーゆーコトいうとあなたのお庭に穴掘っちゃうゾ☆

あらっ……あれにみえるは……イ、イヌ夫!?イヌ夫だわ!!
え、イヌ夫って誰かって?
ヤダァっ!そんなコト……聞かないでよぉっ♪
……どーしてもっていうんなら、教えたげてもいいけど……
んもう、しょーがないなぁ♪
えへへっ、あ・の・ね……
イヌ夫はぁ……あたしのぉ……好きな人、もとい好きな犬なのっ♪
きゃっ☆いやぁ〜ん、ぴょん子はずかしぃ〜ん♪
……もっとも、あたしの片想いなんだけど……くすん……
「ぴょん子、ぴょん子じゃないか!」
「あ……」
きゃあ!!どうしよう!イヌ夫に声かけられちゃった!!
小さなくりっとした茶色の目、長くて黒い耳、常に水気を帯びている黒光りした鼻……
ああン……胸が高鳴り始めたわ……ウサギの心拍数は元々多いけど、
もっともっと多くなっちゃったみたい……
イヌ夫……あなたにはこの心臓の音、聞こえる?
ねえ、舌出して体温調節してないで答えて!!
「ぴょん子、ちょうどよかった。君に渡したい物があるんだ」
「!!イヌ夫!? い、今なんて……?」
「だから、君に渡したい物があるんだ」

ドッキ〜〜〜ン!!

あたしの胸はひときわ大きく高鳴った。渡したい物って……何、何なの!?
……ラブレター? やだ、何考えてるのあたしったら! 期待しすぎよ!
両想いなわけ……ないじゃない……
でも期待しちゃうの……だって……メスだもん♪
八百屋でひと山100円で売ってたニンジン? 真っ赤に充血したあたしの目のための目薬?
ああっ……それとも……イヌ夫の大切な……ファーストキッス?
きゃーーーーーっ!!
そ、そりゃああたしも初めてだけど……で、でもちょっと心の準備がぁ……
だめよイヌ夫、あたしまだ……ううん……いいわ、イヌ夫なら……♪
さあ、このプリティーな前歯が二本出たあたしの口にぶちゅーっと……
や・さ・し・く・し・て・ね……

「はい、これ。こないだ借りたハンカチ。ありがとう」

え……?

イヌ夫の手にはニンジン模様のあたしのハンカチが……
が、がぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!!!
そんなっ……こんなありきたりのオチなんていやあああっ!!
つまらなさすぎるわ!!最低ぇーーーーっ!!
「あっ!ぴょん子!?どうしたんだい!?」
イヌ夫の声はあたしのロングイヤーには届かなかった。
あたしは涙を散らしながら、夕日に向かってうさぎとびで駆けていった……

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