クミンを我が手に!!(臙龍悠耶さん・作)

これはかなり昔の話。
どれくらいかって言うと、みんなの大体十代くらい前の人の生きてた時代。
ん?感覚的に掴めない?
じゃあ、こういう言い方したらどうかな?
ひーひーひーひーひーひーひーひーじいさんの頃さ。
「あのォ……?」
その頃の魔界って言うのはものすごく強い3体のドラゴンが我が物顔で治めていたんだ。
「もしもし?」
ちょっと待っててよ。
で、そのドラゴン達が……まぁ、一種の苛めの対象にしてた魔物ってのが……
「いい加減に気づいてください!」
冗談だよ、クミン。
ボクがキミのことを無視するわけないじゃんか。
「それはそうと、今日はいったい何の誤用ですか?」
ぐはっ……初めっからボクがここに来たのは間違いだと言い切るの?
せっかくドラゴン退治に連れていってあげようと思ってるのに……
「あ、今回はバジル王子様に連れていってもらうことになってますので」
…………うそ?
「本当ですよ。昨日お願いに行ってきましたから」
お願いって……
「ええ、バジル王子様のお名前を上げるまたとない機会ですから。
 ここで不承クミン、一肌脱がぬわけにはまいりませんから」
バジル王子ねぇ……

−−チャキッ……

「何をしてるんですか?刀を抜いたりして……?」
う……声は笑っているのに……ものすごい力で押さえ込んできてない?
「それは悠耶さんの思い違いです。忍者は素早さが要求されるんですよ?
 握力だけを鍛えてる訳ないじゃないですか。
 田舎では駆けっこでは負けなしだったんですよ?」
そりゃ関係ないんじゃ?
って……忘れるところだった。
「いつも2歩歩くだけで物事を忘れるじゃないですか。いまさら忘れても誰も驚かないですよ」
あのな!このままじゃ、冒頭の重々しい雰囲気が崩れるだろうが!!
「重々しくないですよ?」
うるさいやぃ……
「それより、昔話をしたいだけならすぐにでもすればいいじゃないですか」
え〜ぃ!!昔話がしたいだけならドラゴン退治に行こうなんて誘わんわぃ!!
とにかく行こうよ!!
「お断りします」
……ちくしょぉ〜!!
こうなったら一人で行ってきて殺る!!

−−シュゥゥゥゥゥゥ

「あ!悠耶さんが消えた……」
「おーい!クミン!!」
「あッ、バジル王子様…いらっしゃいませ…」
「ん?誰か来てたのかい?」
「気にしないでください、ちょっと変なのが来ただけですから」
「そ、それは逆に気になるけど……」
「それはそうと王子様、今日は何の御用ですか?」
「あ、ああ。あのさ…………」


ちくしょ……ボクのクミンとラブラブ状態になろうとしやがって……
しかし見ていろ……
クミンが王子に協力するのは昔のことがあるからだ。
なら、10代前のハーブランド王が魔界でドラゴンを退治するよりも先に、
このボクがドラゴンを退治してクミンを味方に付けて……
そしてハーブランドを乗っ取ろぅ!!
さて…………そろそろ着くかな?


っと、うわぁ……ものすごく暗いんだけど、ここ……
今昼間のはずなのに……
ま、このくらいの事を気にしていたらクミンを手中に納めることはできない!!
さて……何処にいるのかな?
「おい、そこの変なヤツ」
よく考えたら、方向音痴のボクが道標も無しにこんなところを歩けるわけないじゃん。
「おいこらッ!マンダーの兄貴の話を聞けよ!」
しまったな……先にナビゲータシステムくらい放り込んでおけば良かった。
「いい度胸してるじゃねぇか……どうします?」
なんとか知り合いを探すか……
「こいつ……どうやら俺様が誰かを教えなきゃなんねぇようだな……
 その命をレクチャー料としてな!」
あ、それよりも誰かを脅してしまえばいいんだ。
っつーこってキミ達。クミンの所へボクを案内しなさい。
「んだと!!なめてやがんのか!」

−−ゲシッ!ベキッ!ボキッ!グシャッ!!

あ、何か嫌な音がしちゃったような……
「つ……つえぇ……」
「俺達が3人が同時でかかったってのによぉ……」
で、聞こえなかったかな?
ボクをクミンの所へ案内してほしいんだけど?
「あぁ!?クミンだ?」
「そんなやついましたかねぇ……」
ん?あ、そうか。名前が違うんだ。
えっとね、ピナータに逢わせてほしいんだけど?
「ピナータに……だと?」
断る気?
「くっ……あいつは俺達の物だ……」
ふーん、渡さないって言いたいのかな?
どうやらまだ、力の差って言うのが解ってないみたいだけど?
「わ、解った。逢わせよう」
「あ、兄貴ぃ……」
「言うんじゃねぇ、この俺様がこんなガキに……」
彼女は何処にいるの?監禁中とか?
「んな訳ねぇだろ?互いに顔をあわせりゃあ、そのまま勝負。グヘヘヘヘヘ……」
「で、適当に痛めつけてから楽しむって寸法。ケケケ………」
「3体1で確実にこっちの勝利……もうたまんねぇよォ!」
ふーん、んじゃ、キミ達のお手並みを見せてもらおうかな?


「いたぜ、ピナータだ」
おっ?どこどこ……あ、あれか……
へぇ〜、見た目全然かわんないや。
魔物って300年くらいで見た目はかわんないの?
「300年くらいも何も、生まれたときの姿からかわんねぇよ」
「つまり、生まれたときから俺達みたいなのは強いってこった」
ふーん……まあいいや。
で、キミ達はどうするのかな?
「……またあんた達……?ま、丁度いいね。この前のお返しをさせてもらうよ!」
うわっ!クミンが始めっからダークモード……あ、こっちが本性か。
「相変わらずいい匂いじゃねぇか……お返しだ?できるもんならやってみな!」
「ケケケ……」
「さて客人。今日の楽しみはどうすんでい?」
ん?楽しみって?
「決まってんじゃねぇか!あいつになにするって事だよ!
 あいつの脚はいいぜぇ……全身の綺麗な白い肌の中でも一番だ。脚がさぁ……
 ちょいと傷を作ってやりゃあ、『痛い、痛い』って叫んでよォ……
 あいつには苦痛にゆがむ顔が一番お似合いだぜ……」
危ないやつだなぁ……でもま、ボクもそういうのはそんなに嫌いじゃないよ。
「話せるやつだなぁ……んじゃ待っててもらおうか?すぐにお楽しみのピナータを連れてってやるぜ!」
「うぅっ……!!」
「ケケケ……!どうしたんだ?ピナータ……いつもより調子が悪いようだなぁ……」
「グヘヘヘヘヘ……大方この前の傷が治ってないんだろうよ……」
「ひゃははっ!いい匂いだぁ〜早く味がみたいぜぇ……!」
この辺がいいタイミングかな?
よーし、クミンもかなり傷ついてるし、ドラゴンは油断してるし……
「待てっ!」
「な、何だ!?」
「客人……何のまねだ!?」
ピナータを傷つけることはこのボクが許さない!
「てめぇ……だましやがったな!!」
だましたなんて人聞きの悪い……戦略的な行動と言ってほしいな。
「てめぇの目的はこの世界か!?」
いや、ピナータをボクだけのものにするためさ!!
と、言うことで、キミ達にはさっさと死んでもらうよ。

−−バシュッ!!

さて……これでしばらくは動けないだろうし、
後はこの状態をクミンに見せて、ボクが彼女を救ったと思わせれば……
……ありゃ、気絶してるよ……
ま、気がつくまで待ってようかな?
………………
う〜ん、ちょいと血に染まった白い脚が……
やべっ……マンダーに洗脳されたかな?
……まったく気がつくような気配ないな……
今だったら喰っちゃっても気がつかないかな?
…………周りには誰もいないみたいだし……
…………………………
…………………………
いっただっきま〜っす♪

−−サクッ!

フギャッ!頭の真ん中まで剣が刺さった!?
誰だよ!!
「傷ついた女性に乱暴しようとは男の風上にもおけないな……」
あぁ!?なんだよてめぇは!!って、これじゃあマンダーといっしょじゃん。
と言うか、こんなところにお前は何しに来たんだよ。
「この闇の世界に、我が国を狙う4匹の魔物がいると聞いて退治しに来たんだ!」
4匹の魔物を退治に……?
ま、まさかこいつが10代前のハーブランドの王?
こうなったら、こいつに消えてもらうか。
そうすればもう、あの王子達は生まれてこないんだろうし、12人全部ボクの物〜!
「お前も魔物の一人か?」
誰が魔物だ!!とにかく……お前を殺してや……あ、あれ?

−−シュゥゥゥゥゥゥ


お、おい!なんで時間移動通路が開くんだよ!!
「すみません!電池切れです!!」
そ、そんな……もう少しでクミンがボクの物に……


「何だったんだ?あいつは……向こうに消えたのか?」
「ぐっ…………」
「こ、こいつは……4匹の魔物のうちの1体!?
 いや、横にまだ2体……よし、こいつらを壺の中に封じ込めよう!
 ……何か武勲のしるしになるようなものは……あ、この青竜の首のこれを……っと」

−−ゴォォォォォォ!

「よし、封印完了。これで我が国も少しは平和に……」
「あ、アンタ……いったい……」
「ん?私はハーブランドの国王。今日はここから我が国を狙う4体の魔物を退治しに……
 き、君ももしや……魔物?」
「どうやら、マンダー達を倒してくれたようだね……癪だけど礼をさせてもらうわ」
「それはそうと、子供みたいな変なのがいたけど、あれも魔物かい?」
「ハッキリとは顔を覚えてないけど……嫌なやつだね。次にあったら殺してやりたいわ……」


はぁ……結局、マンダー達を押さえ込んだだけで何の収穫も無し……
その上、時間移動通路は充電のために後200年はかかるって……
こうなったら、実力でクミンを落とす!!
っと、前方にクミン発見!じゃないか、さっきの時間に戻ってきたから、さっきの続きか……
「週末のドラゴン退治、俺と一緒に行かないか?」
「はい、かしこまりました!お供させていただきます」
待て待て待てー!!
クミンとドラゴンを退治に出かけるのはこのボクだ!!
「お断りします」
うぐっ……そんな一言で……理由くらい教えてくれよぉ……
「昔、王子様達のお祖父様に助けていただいたとき、私の命を狙ったものが3人いたんです。
 そのうちの3人はお祖父様が倒してくださりましたが、黒幕らしき最後の1人と、
 悠耶さんがどうしても似ていて……」
……ちょっと待った。
王子達のお祖父さんに助けられた?
その上、敵は4人で、3人は倒したけど黒幕みたいなのが1人って……
「なんかよくわかんねぇけど……ま、週末を楽しみにしてるぜ」
「あ、すみません。さようなら、バジル王子様」
なんか……もしかして余計なことをしないほうが良かったって事かな……?
「さて……あの頃のお礼をまだしてなかったわね……」
え?お礼って……あ、あの……クミンさん?
「マンダー達を陰で操っていたの、本当はアンタだって……?」
あのォ……いつのまにか正体ばらしてますけど……
「あの時、あいつらにできなかったお礼。アンタで晴らさせてもらうよ!!」


「長老!!村の外れに変な生き物の死体が!!」
「こんなこと、ここに我らがヤロー族の村を作って以来、今まで一度もなかったぞ!?」
「ふむ……これは……」
「何ですかね?」
「俗に宇宙人と言われる魔物の死体じゃな。
 てれび局に売りつけると一年は遊んで暮せるくらいの金が入るぞ?」
「なら、切り刻んでいくつかのてれび局に渡しますか?」
「いや、このままの形状で早めに引き取ってもらうのがええ。
 金にはなるが、ずっとおいておくと災いをもたらすとも言われておる」

ちくしょぉ……次こそは……次こそは……
あ、そんなことより、早く体力を戻さないと……
このままじゃテレビ局が特番を組んじゃうよ。
よし、次はもっとおとなしい娘をえらぼぅ……

 

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