ウサギのぴょん子恋物語
〜バースディパーティの戦いでぴょん!〜前編


はぁ〜い、あたし、うさぎのぴょん子でぇ〜す!
えへへっ、今日はイヌ夫のお誕生日会なの♪
あたしも招待されてるんだぁ。
ああ…イヌ夫…やっぱりあたしのこと……
絶対“近所に住んでるから”なんてくだらない理由じゃないわよねっ♪
で・もっ!イヌ夫をねらってるメスは、この動物村にあたしを含めてた〜〜くさんいるの!
その中にはゴリラやヒキガエル、果てにはエリマキトカゲまでいるのよ!
んもーう、信じらんないってカンジぃ!
犬とつり合うわけないのに身の程知らずもいいとこよねっ!
その点あたしはかわいいウサギちゃん♪昔っから人々に親しまれている
とってもポピュラーな動物ちゃんよ♪
「かちかち山」の性悪タヌキをうち負かした賢いウサちゃんの話は有名よねっ!
ウサギは可愛い上に頭もいいんだから♪
え?「イナバのしろうさぎ」では鮫をだまし損ねてあかむけになってたし、
「ウサギとカメ」では油断して眠りこけ、カメにかけっこで負けてた?
っるせーっ!!あんな間抜けなウサ公どもはウサギと認めねぇっーー!!
あらやだ、あたしったらついムキになっちゃった♪
あっ、大変!!遅れちゃう!!
急いでイヌ夫んとこいかなきゃ!!


「イヌ夫!1歳のお誕生日おめでとう!」
あたしは勢いよく扉を開け、イヌ夫の家に飛び込んだ。
「あ、ぴょん子…ありがとう」
イヌ夫が舌を出して笑う。
文字通りの犬歯の間から滴る唾液は究極に生臭い。
ああ…ステキ……あたしはイヌ夫にメロメロキュ〜ン♪

はっ…な、何あいつ……
イヌ夫の隣でにこにこしているあの猿……あっ!思い出した!!
あいつ、最近イヌ夫と仲がいいって噂のサル美だわ!! 
むきぃ〜っ!犬と猿は『犬猿の仲』呼ばれるぐらい仲が悪いんじゃなかったの!?
離れやがれあんちくしょーっ!!
あたしはニンジン模様のハンカチをかんだ。
その時、バリバリという変な音が聞こえてきた。
「あんのエテ公〜っ!わたくしのイヌ夫にあーんなに接近してーーっ!」
見ると猫のネ子さんが、かまぼこ板を取り出して爪を研いでいる。
ネ子さんもイヌ夫のことが好きな、あたしのライバルの一人なの。
全身の毛を逆立て、しっぽをピンと立ててひげをヒクヒク動かすその姿は、
見る物を恐怖に陥れる……ああ、怖い……
「ちょっとぴょん子!私情入った解説入れるんじゃないわよ!!」
ちっ……。ばれたか。
「フン……ぴょん子、悪いけどイヌ夫はわたくしがいただきますわよ!」
「な、何よ猫のくせに!」
「あーら、猫は兎よりモアポピュラーなのよ!? 人間に親しまれている二大動物、
犬と猫!!まさにベストカップルじゃありませんこと?」
「ふんだ、猫は昔から不吉な動物としておそれられてるじゃないの!!
魔女の使い魔には猫が多いし、昔話にも人を喰う化け猫とかがよく出てくるわよねぇ〜」
「何ですって!?“長靴をはいた猫”を読みなさいよ!賢いネコちゃんは
貧しい粉ひきの息子だった主人を姫と結婚させて、見事なまでの逆玉にのらせたのよ!?
そんなこと兎にはできて!?」
あたしとネ子さんはイヌ夫がいることも忘れて言い争った。
「まあまあ、二匹とも落ち着いて下さい」
それを止めたのはこともあろうにサル美だった。
誰のせーよ、誰のっ!!
あたしはサル美に対して激しいジェラシーと怒りを覚えた。
イヌ夫の前でいいかっこしやがって……
おまけに『二匹とも』ですって!? ウサギの数え方は『一羽』なのに……
ネコと一緒にするんじゃねーっ!!
「ぴょん子」
ネ子さんがあたしの耳元にささやく。
「どう?今回だけは手を組みませんこと?あのこ憎たらしいサル美を
どうにかしてイヌ夫に嫌わせるのよ!!」
いつもならネ子さんと手を組むなんてまっぴらごめんだわ。
でも今回はあたしもネ子さんと同じ気持ちなの!
あのサルだけは許せない!このままじゃイヌ夫とカップルになりかねないわ!!
それだけは阻止しなきゃっ!

あたしとネ子さんは一日限りの同盟を結んだ……

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