碧ちゃんを我が手に！！（臙龍悠耶さん・作）
さてと……人の噂も７５日。
いくらなんでも、まだ宇宙人の報道のために張り込んでる記者はいないだろ。
と言うより、まだ追いかけてくるくらいに執念ある奴がいたら恐いわな。
前回でトリ君は倒したから、今ならこの世界はボクが好き勝手にできるってわけだ。
これでようやく、もともとは通りかかったついでのはずの用事が終わる……
よし、碧ちゃんをボクのものにして、さっさとこの世界から移動しちまおうっと。
え〜っと、現在の時刻は……
もうすぐ授業終了のチャイムがなるだろうし、そろそろ放課後だね。
なら、新聞部の部室にでも、間合いを見計らっていきますか。
え〜っと、確かこのあたり……あ、あったあった。
――コンコン
「……誰？」
誰って言われりゃ……
通りすがりの宇宙人だ！
……って、そうじゃなくて。
「悪いけど、勧誘なら新聞も宗教もお断りよ」
ちがぁ〜う！！入部希望者だよ！！
「そう、じゃ、入って」
へいへい……
と言う事で、入部希望者の悠耶だ。
よろしく頼むよ。
「あなた、ずいぶんと態度がでかいわね……」
キミに言われたくないんだけど……
「何か言った？」
言ってません！
とりあえずは新聞部に入りたいと思ってきたんだけど……
「珍しいわね、こんな時期に」
いや〜、それは気にしないでおいてよ。
あ、忘れるところだった。
こんなのいらないかな？
「なに、その箱？」
御近づきの印にって思ってさ。
天羽さんって昆虫が好きなんでしょ？
キミの書いた記事を呼んだんだ。
で、昆虫が好きなら特別にって、飼育室から持ってきたんだ。
この星にはそうそういないと思うよ。
じゃじゃ〜ん！孵化する前の宇宙アゲハ！！
「アゲハはともかく、宇宙ってなに？」
それは気にしちゃいけないお約束って事で。
で、とりあえずボクは入部していいのかな？
「入部届けの用紙書いてくれる？
必要事項を書いてもらって……後は部長が来てからね」
へいへい。
あ、他の部員の人は？
まだ来てないみたいだけど……
「ほとんどが幽霊よ。
昨日見たから、今日は来ないと思うわ」
そりゃまた……
「部長は用事があるって言ってたけど、もうすぐ来るはずよ」
ふ〜ん……んじゃ、待ちますか。
入部届けでも書きながら。
――ガラガラッ
「遅くなって、ごめん」
「大丈夫よ、たいして時間は過ぎてないわ」
「あれ……その人は？」
「入部希望者だって」
初めまして、悠耶って言います。
……上岡さん、でしたよね？
「僕の事知ってるんだ？」
ええまぁ……とりあえず、これからお願いします。
……とネコを被っておいてっと……
「なにか言ったかい？」
いや、別に何も……
「進君、現像できたかしら？」
「出来なかったら来ないよ。
でも、碧はだんだん写真を撮るのがうまくなるなぁ……
もう僕がカメラマンである必要はなくなっちゃったね」
「ふふっ、ありがとう。
進君の方も、部長なんだからもう少し早くに原稿をあげてね」
……ちょっと待て、名前で呼びあってるって……
もしかして２人…つきあってる？
「え、そ、その……」
「ん、まぁ……ね」
って事はこれ、グッドＥＤの後かよ！！
噂が納まるまで待ってたから、その報いなのか！？
ちくしょうぅぅぅぅ！！！
――ガラッ！！ダダダダダ……
「何だったんだろう……」
「別にいいじゃない？なんだが言動が怪しい人だったから」
「……それもそうだね。
あ、でももしも万が一、まじめな人だったら人手を失うのは痛いね……」
「大丈夫よ、だって百合もいるんだし」
え〜い、あの野郎！！
くっ、こうなったら……
上岡進を生まれてこなかった事にしてやる！！
んでもって、彼のポストにボクがついてやる……
そうすれば問答無用で碧ちゃんと結ばれる事が出来るんだし！
よ〜し、完璧じゃないか！
このプランで碧ちゃんとのグッドＥＤを迎えてやる〜！
「そんなこと……させません」
ん？ここは……
どうやら、無意識のうちに校舎内を適当に走り回って屋上に来たようだな。
屋上って事は……もしかして……
『あの２人の邪魔は、私の命に代えてもさせません』
うわぁ〜！？
これは意識操作か！？
くぅ……こんなものに負ける悠耶では……
『無駄です、貴方の精神は単純な作りをしていますから。
貴方に、これを打ち破る術はありません』
そう、言われて……素直に負けるボクでは……
『この世界で起こった事、全てを……忘れなさい』
あ……やばい……
もう意、識が……消え……碧ちゃ、ん……
あれ？ここは……
ボクは一体何をしていたんだ？
え〜っと……そうだそうだ、思い出した。
ハーブランドが住みにくくなってきたから、新しい世界を探して彷徨っているところだったっけ。
んじゃ、また誰かに捕獲される前に逃げますか……
(01/1/29)