「誰でもいいから我が手に!!PART2」(臙龍悠耶さん・作) 

 

よ〜っし! 溶けた皮も筋肉も、ようやく復活したぞ!!
この輝かしい日を記念すべく……
東洋人傭兵を潰してくるかな。

さて……東洋人傭兵を待つなら、下手に兵舎に向かうより、平日ならいいところがあるじゃないか。
そう、ドルファン学園が。
待ってりゃその内来てくれるだろう。
丁度登校時間だしね ……
おや? 向こうから来てるのはロリィとレズリーの二人か。
ん? レズリーが離れた……?
なるほど、学校前にある店で昼飯でも仕入れるんだろな……
ふむ……
こっちに来てからちゃんと知り合いになった女の子いないし……
ここはやはり、白馬の王子様として登場しなきゃね。

「あっ……」

ふっふっふ……恐怖の後には尊敬と羨望の眼差しが来ると相場は決まってる。
ロリィよ、恐れおののくがいい……
って、このままじゃボクはただの変態さんではないか。
とにかくこの、謎の薬品をかぶってえらい事になってしまったこいつをけしかけるかな。
ふっ、バカな犬め。ボクのおやつのホットケーキを奪い取った罰だい。
せいぜい、ボクのために頑張って役立ってもらおうか。
は〜っはっはっは!!

――ドカドカドカドカドカ!!(ただいま画面は暗転しております)

「な、なにぃ!?」
「我、拳極め……じゃない。あんたが、この子に付きまとっていた変態だね」
「うぁ? な、なにを言ってるんだよ……初対面の人間にこんなことしておいて……」
「お姉ちゃんこの人……」
「あぁ、ロリィ……ボクにかけられた誤解を解いてくれるんだね……」
「顔も身長も全然違うよ」
「そうだろそうだろ。ボクはキミ達とは初対面で……」
「でも、絶対この人に間違いないよ!」
「待てぃ!! 顔も身長も違ってんのになんで間違い無い!?」
「やっぱりね」
「なんでお前もそこで納得する!?」
「こんな情報までくれるなんて、ほんとに昨日は悪い事しちゃったなぁ」
「……? あの……昨日というのは……?」
「東洋人の傭兵を、あんたと間違えて殴りかかったんだよ」
「お兄ちゃんが言ってたもん! ロリィに付きまとっている人なら、きっと次の日に来るんじゃないかって!」
「間違ってないようで、なんっつー保障も何にも無いような情報を信じる〜!?」
「問答無用! おとなしく、あたしに殴られな!」
「やだ!!」

――ボムッ!!

「なっ……煙玉!?」
「あ〜、お姉ちゃん、もうすぐチャイムなるよ?」
「あ、ああ。そうだな。またあったら、次こそ命とめてやろうな、ロリィ」
「うん♪」

……な、なんっつー危ない会話してるんだよ、あの二人は……
しかし…… あること無い事言いふらしてんじゃねぇ! 東洋人傭兵!!
こうなったら、さっき召喚し損ねた謎の薬品かぶって(以下略)を兵舎に送り込んでやる……
ふっふっふ……ついでに恨みも込めて、怪しい物体を幾分ブレンドしておこう。
ほんとに怪しいぞ〜、触るだけで生身なら取り込まれるだろうしな〜

「あっ」
「……あっ?」

やぁ、空から女の子が落ちてきた……
なんてのんきに構えてられないよなぁ。
ほら、もうぶつかるまで0.04秒程度だし。
けど、どう見ても身長よりも高いこの塀を、どうやって乗り越えてるんだ?
回り道した方が近いような……
って、何でボクは避けようともしないで実況してるんだ!!

――ドスン

「ごふっ!!」
「いてて……あ、いけない! せっかく飛び越えたのに遅刻しちゃうよ!!」

――タッタッタッタ……

ひ、酷い……
何処をどうやったら上から落ちてきた人間が、下の人間押し倒した挙句に、
狙い済ましたように落下して加速度のついたエルボーを全体重かけて鳩尾に叩き込めるんだ……?
……あり? 怪しい物体は一体何処いったんだ……?
確かに呼び出したはずなんだけど……
ま、いっか。 どうせ今日は厄日なんだし……こんな事もあるだろう……はぁ。
しかし彼女らは……口説く暇すら与えてくれんのかぃ!!

 

……どうせ厄日とは言え……
訓練所にたどり着いてしまったら、邪魔しないわけには行かないよなぁ〜
さて、何処にいる? 東洋人傭兵!!

「ちょっと待ちなよ」
「ん? あれ? 何でこんなところにメネシスが?」
「あんたね、困るんだよ」
「困るって……?」
「こんな物森に捨てられちゃ、あたしに容疑がかかるじゃないか」
「はぁ……」
「責任持って分別して所定の場所に捨てなよ」 
「……って、これは……いなくなった怪しい物体……」
「じゃ、確かに返したからね」
「……お手数かけました……」

……なんでこれが森の中に……?
 まぁいいか。 とにかく、予定通りこいつを東洋人傭兵にけしかけてやる!
ん? なんでこの怪しい物体、背中にボタンがついているんだ……?

――ポチッ

こんなのついてたっけなぁ……
あれ? なんか書いてある?
『注意! 自爆ボタンにつき最後の手段まで押さない事』
……なるほどぉ〜って、なんで自爆ボタンがあるんだよ!!

――100……99……98……

わぁ〜! なんかカウントダウンが聞こえてくるぅ!?
な、投げるかなんかして、とにかく逃げよう!
大丈夫、まだ1分以上ある。
慌てず騒がず落ち着いて……

――85……84、3……2……1……

う、うそ……

――ドッカァァァァァァン!!

んなお約束なぁ〜!!!

 

「……さすがゼールビスね……」
「やはり奴は、ドルファンにいるのですな……」
「今更何を言ってるの? あんな爆弾を作る人、ゼールビス以外に私は知らないわ」
「左様ですな……しかし、一体何を爆破したのか……」
「傭兵宿舎……いえ、その近くのようね。陽動……?」
「さて、それはどうでしょうな。しかし、奴がドルファンにいる事が、我らにとって凶と出るか吉と出るか……」

「あんな爆弾をあたしに送りつけてくるなんて……あいつ、何を考えて……?」

「あれぇ? キャロル姉さん、やけに機嫌いいけどどうしたの?」
「キャハハハ、ちょっとね〜」
「……また何か悪戯したんじゃない?」
「えー? 悪戯なんてしてないって〜。  ただね、落っこちてた爆弾みたいなのをー、なんだかよく解らない物に埋め込んだのよ〜」
「…………まさかさっきの爆発…………」
「キャハハハ そうだったら面白いわねー。でも、わたしは森に投げ込んだから、さっきの違うわよ〜?」

「む……試作第347型自爆用爆弾がありませんね……まぁ、いいでしょう」

様々な憶測がドルファンを、そしてヴァルファバラハリアン陣営を飛び交う。
ドルファン暦26年4月。
どちらも、後に「イリハ会戦」と呼ばれる戦いが3ヵ月後に起こるとはまだ知らない……
……なんて言ってる余裕があるほど、ボクの身体は無事じゃないんだけど……
うわぁ〜! 飛び散った内臓器官〜!!
早く戻ってこ〜い!!
うぅっ……今回はまともに話も出来ないでボコボコにされただけなんて……

(02/5/7)

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