フェンネルを我が手に!!・後編(臙龍悠耶さん・作)

 

「ここに……このエレベータが上がりきったら……」
「大丈夫ですよ、フェンネルさん。何があっても僕は貴方のことを守ります。
 それに、貴方がどこかに行っても、僕は貴方のことは忘れませんよ。
 確かにとても寂しいです。けど……貴方とこうやって新たに思い出が作れるんです。
 だから、安心してください。
 全てが終ったら、僕が王になれてもなれなくても、僕は貴方を迎えに行きますから」
「リンデン王子様……」
「あ、見てください。もうエレベータが終りますよ」

−−ガシュン……

「あっ!!」
「あれは……」

覚悟しろ!セルリアック!!

「くっ……このままでは……む? あれは……」
「な、何?」
「片方の魔物は悠耶さんですね……もう片方の青ゴキブリは?
 フェンネルさん、心当たりあります?」
「誰が青ゴキブリだ!!それより小僧……よく王女をつれてきてくれたな……」
「王女!?」
「わ……私がですか!?」
「なんだ?俺が出した手紙を読んでなかったのか?」

あ、そりゃ無理だよ。
ハーブランドの城下町にはボクが張り巡らせたフィールドがあるからね。
ボクに……じゃない。人々に不快感を与えるような手紙、
言っちゃえば都合の悪い手紙を持った鳩はそこで手紙を置いて帰るように出来てるんだよ。

「お前か!!」

−−ヒュッ!

キミの自慢の爪の攻撃だって、ボクには効かないよ。
ほら、そこの二人。
ボクに加勢してくれるんならありがたいけど、
助力なんてボクには不要だから怪我しないように横に行ってた方がいいよ。

「ぐっ……お前相手では……こうなったら!王女だけでも殺してやる!!」

−−シュゥシュゥシュゥシュゥ……

あ!!フェンネル危ない!!

「悠耶さん!?」

−−ドヒュゥゥゥン!!

う、うわぁぁぁ!!
くそっ!!落ちて……落ちてたまるか!!

「ほう、これは……辛うじて片手で縁に掴まっているようだが、この手を踏むとどうなるかな……」

うがっ!!こ……この……うわぁぁぁぁぁぁ!!

「そうだな……お前を殺す前に、先に王女を殺しておくかな。
 その死体と一緒にお前も落としてやるさ」
「フェンネルに近づくな!!」
「リンデン王子様!」
「ガキはどいてろ!邪魔だ!!」

−−ゲシッ!!……ドカッ!

「あ!!リンデン王子様が……そんな……」
「ちっ、殺し損ねたか……まあいい。後から殺せばいいからな。
 それよりお前の始末だ……」

待て……そんなことは……させない…………

「ん?死に損ないは黙っていろ」

フェンネルは……ボクの大切な人は……絶対にお前に傷つけさせない!

「そんな体制で何を言うかと思えば……」

ボクは負けない。ねえ、フェンネル……

「な、何ですか……?」

ボクは、たとえこの身が崩れて消えてしまっても……死ぬことになっても、
誰の記憶にすら残らないような事になったって、キミさえ生きていればいい。
そんなふうにキミを思っていたやつがいた事……もしボクがいなくなっても忘れないで。
なんて……勝手だよね。迷惑だよね……ごめん……

「悠耶さん……」
「頭すらまともに出せないヤツが何を言う。
 さっさと辞世の句でも考えてろ!
 あぁ、それよりも、後からアメリカに運んでやろうか?
 NASAで解剖される寸前に言う言葉でも考えておけ」

だからそんなシャレにならん事言うな!
っと、取り乱しちゃいけないな。
ふっ……ボクがさっきから武器は使ってないと言うことを、
もうちょっと考えたほうが良かったんじゃないかな……
本邦初公開、今まで実際には素手だった悠耶の標準装備武器……!

−−キュィン!

「な……バカな……」
「空から……光が……?」

レーザー光線って言うんだよ。
今の一撃でキミの身体にマーカーを埋め込んだ。
これでもう、攻撃は避けられないよ……
喰らえっ!衛星軌道潜伏式スナイパータイプレーザー全機一斉砲撃!!

−−キューン……シュワァァァ……

「バ、バカな……身体が溶ける……?」

そりゃ、レーザーは光で、熱を持ってるからね。
これでキミはもう終わりだよ。ここで死ぬんだ。

「ぐっ……や、やくそ…………ちが…………」

さて……このままじゃこの塔が崩れるから、さっさと逃げないと……
あ、あれ?
手に力が……くそっ!上がれない……

「大丈夫ですか?あの……手を……」

ありがとう。
でもキミじゃ無理だよ。

「無理でもいいんです!だから手を掴んでください!!」

フェンネル……?

「迷惑なんかじゃないです!私はずっと悠耶さんのことを覚えてます!
 記憶を消されたって貴方のことを覚えておきます!
 だから……だから死なないで!!」

あ、ありがとう……よっと。
はぁ……助かった……
さぁ、早く帰ろう。もうすぐ夕方になっちゃうよ。

「はい!あ、リンデン王子様が……」

まだ気絶してるね……よし。
ボクが担いでいくよ。

「すみません」

いいって。
さて……どうやって降りようかな……
エレベータも結構壊れちゃったし……
ん?何だろう、この羽根……?

「これ……純白の翼?」

あ、なるほど。
これを使えばキミは天界に行けるけど……どうする?

「……使います。そして、地上からロープを持ってきますね。
 そうすれば悠耶さんは降りられますよね」

ああ、出来るさ。
じゃあ……頼もうかな?

「ま、まちやがれ……」
「セルリアック!?」

ちっ……まだ生きてたか……

「心配するなって……俺にゃもう殆ど力は残ってねーよ……
 そう、お前等をまとめて始末するだけの力しかな!!」

くっ!!シールドを……

−−ドッカァァァァン

攻撃は防ぎ切った!ちょっと押されたけど……?
足下に何もない……と言うことは……
うわぁぁぁ!!落ちるぅ!


と言うことで……
フェンネルは落下中に羽根を広げ、リンデン王子の手を取って地上に帰りました。
落下中に塔の外壁にぶつけ、右側の羽根が折れてしまいましたが、
彼女はそのまま、地上人として今も教会に住んでます。
めでたしめでたし……に今日は出来ない!!
何であれだけボクに傾いてたはずの彼女がリンデンの物に!?
と言うことで、塔の横に古典マンガの様な人型の落とし穴を作ったボクは、
その中で地上で何が起こったのかを写し出す投影機を……3分で作った。
では再生。


えっと……ボクら三人が落下して……
あ、フェンネルの羽根が広がった。
ここで……ボクのほうに降りてきてくれて……何!?
ボクが浮き上がった!?
あ、とりあえず落ちていくリンデンを助けて……
地上に降りちゃった。
あれ?んじゃボクは何で地面に埋まってるんだ?
とりあえず出てみようか……
投影機の映像にはボクは途中までしか映ってないからね。


……ここ何処!?
いや待て、微妙に見覚えはあるぞ……
やっぱり……溶岩があるって事は、ここは灼熱のほこらか……
なんでこんなところに……
ハッキリ言ってハーブランドを横断しちゃってるじゃんか!
う〜ん……あ、もしかして……
やっぱり……ボク、空飛べたんだ……
高度15000mに上がるのに使った機械がまだ生きてて……
んでもって落下してるときにエマージェンシーコードにかかって緊急高度上昇装置が……
ん?何で落ちてるんだ……?
あっちゃ〜、また電池切れか……
これで納得が行ったや。
緊急装置で上に上がったのはいいけど、その最中に電池切れで装置が停止して、落下……
風に流されてこんなところに来たのか……
んじゃ、とんでもないくらいの高さまで上がったんだな……
いや、いくらなんでもこんな距離は流されないだろ!?
何かここに、ボク引きつけるようなものがあるのかも知れない!!
よ〜し、ちょっと探して見よぅ!

「おやぁ〜?キミ、どっかで見た顔だねぇ〜?」

そういう古い手を使うなっての。
それ以前に、ナンパも逆ナンもおことわ……何!?

「あ〜、思い出したよ〜。前におじちゃんといっしょにテレビに映ったこだね〜?
 あの後〜テープに異常があってね〜。おじちゃんだけべ〜つに改めて取ってもらっちゃったんだよ〜」

……で、何でチャービルがこんなところにいるのかな?

「な〜にって決まってるじゃん。今日は別の親切な人たちがおじちゃんを取ってくれるんだって〜」

別の……親切な人?
って事はまたテレビか!!
やべっ……早く逃げなきゃ……

「住職、こちらです!」
「うむ……これは……とんでもない悪霊だ……」
「さあ博士、これでも幽霊はいないとおっしゃるのですかな?」
「くどいようだが、幽霊などと言うものは存在せん。
 幽霊とは一種の宇宙人なのだ。
 そのために幽霊を一体捕まえるだけでありとあらゆる宇宙人を捕えることが出来るのだ!!」

ん?何か今日はいつもと毛色が違う様な気が……
テレビカメラはいないな……
んじゃ、ちょっとは安心してもいいかな……
あれ?そういえばさチャービル。
「親切な人たちがおじちゃんを取ってくれる」って……
「取る」じゃなくて「撮る」の間違えじゃないのか?

「い〜や、違わないよ〜。
 今日の人たちはおじちゃんを取るんだって」

そういえばさっき、幽霊は宇宙人の一種と豪語してたおっさんがいた気が……

「うぬっ……これは……新種の悪霊のようだ……」
「何を言うか!これこそ宇宙人ではないか!」
「よし、お札の用意を……」
「はい!解りました!!」
「そんなもん、何の役にもたちゃせんよ!」
「博士、捕獲様の網です」
「これこれ……さて……、2体とも捕まえるぞ!!」

どわぁ〜!!これってある意味NASAより恐い!!
マッドな人ほどなにしてくるか解んねぇ〜!!
ちくしょぅ……今日は失敗しなかったってのに……
でもなぁ……あの映像の感じからすると、
ボクがいなくなったことで完全にフェンネルはリンデンの物になってるし……
ちぇっ……ボクのこと忘れないでいてくれるって言ってたのに……
こりゃ完全に忘れられてるよな……
ほかの娘か……
天ボケでも、ペースに引き込んだ後が間違えると失敗するんだな。
んじゃ、好感度の勝負だな。
一気に高感度を上げられる対象のアイテムがたくさんある娘……
うん。これなら後はどういうふうにペースを持ってくかだけだ!!
今度こそ……

 

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