チコリを我が手に!!・前編(臙龍悠耶さん・作)

つ……辛かった……
頭のイッてる坊さんとマッドな科学者……
捕まえられる前に逃げ切れて良かったよ……
と言うか、もう逢いたくなぃ!!
っと、取り乱してる場合じゃないね。
次のターゲットを決めなきゃ……
う〜ん……あ、そう言えばボク、今までアリを潰すくらいの感覚で何体かのボスキャラを倒したんだっけ。
獲得アイテムは〜っと……
ドラゴン3体を倒した分で「涙のクリスタル」と「秩序のオーブ」、それに「道徳の毛皮」。
ベトニー伯爵を取り込んだからあいつの持ってた「女神の牙」は解けながらも取ったし……
セルリアックからは「純潔の翼」を……あ、フェンネルが今持ってるんだ。
……ゲーム中に出てくるアイテムはこれだけか……それ以外の隠し武器ならいくらでもあるのに。
え〜っと……あ、七大秘宝が3つあるや。
んじゃ今回はチコリにしよ〜っと。


よく考えたら、この前の時点で9月なんだっけ……
って事は、いくらあの王子たちでもバカじゃないだろうから、気合いのサイコロを満載して
ボスを倒してただろうな……
つまり……うげっ!?こっちの手持ちの3つ以外はすでに誰かが持ってるんじゃないか!!
いや、すでにチコリにプレゼントしてるはずだ!!
う〜ん……同じレベルのものが3つと4つじゃな……
そうか。ボクの力で時間をねじ曲げればいいんだ。
イベントを入れ替えて、必要なイベントを今より後に持ってくれば……
んじゃ早速……

――みょみょみょ〜〜〜

よ〜し、ドラゴン戦をする冒険の所をすべて必要なイベントと入れ替えたし……
後はボクに都合のいいように並べ替えを〜っと……
よし、出来た。
あ、手元にこんだけ持ったままじゃ邪魔だね……
どっかこの辺にちょいちょいと隠しておいとくとして……さて、チコリを誘いに行くか。

「あれ?悠耶じゃない。人の家の前で何してんのさ?」

へっ?チコリの家の前……?ホントだ!?
いったい何時の間にここまで……

「キミ、全然気がつかなかったの?」

あはは……ほっとけ。

「まあいいや。ねぇ、物は相談なんだけどさ今回の冒険、ボクと組もうよぉ〜」

ん?いいよ。って言うか、もともとそのつもりで来たんだけどさ。
こっちから誘う前に、キミみたいな娘からお誘いを受けるなんて光栄だな。

「ホント!?あ〜良かった。次の冒険先にさ、七大秘宝の一つがあるんだって。
 もう9月なのに、いまだに一つも集まってないんだよね……
 で、お母さんのために東走西奔しているチコリちゃんとしては、ここらで一つくらい確保したいわけ。
 キミが来てくれれば確実に手に入るって信じてるんだよ」

そりゃ……恐ろしく身に余りすぎるくらいの光栄だよ!
キミにそこまで信用されてるなんて!

「だってキミ、人間じゃないでしょ?
 宇宙人って魔物だって聞いたし、七大秘宝集めさせた後にキミを倒して奪い取るっててもあるから……」

おひ……

「七大秘宝って言うのは、必要な人が持つべきだと思わない?
 少なくともあの『バカ』に持たせるものじゃないと思うんだよね」

それについては同意するけど……
ま、いっか。明日……あ〜、明後日の朝に迎えに行くよ。
だから明日一日、準備して待ってて。

「……何しに行く気か知らないけど……ま、楽しみに待ってるからね」


やったぁ〜!断られる事なく誘えた!!
よし、では当初の予定通りに彼女の期待に応えようではないか……
本当は明日に迎えに行ったっていいんだけどね……
七大秘宝をラストの一個以外揃えて、ラストを獲得したと同時に彼女にすべて渡す……
こんなにおいしいシチュエーションが、未だ嘗てあっただろうか!?いや無い!!
と言うことで……
まずはダンデライオン家の宝物庫に忍び込むとしよう。

――ガチャ……ガチャガチャ……カチン!

と言うことで取り敢えず敷地の中に……って……
見張りいないやん!?
さすがにアニスのいるとことかには、見張りはいるんだろうけど……
重要人物のいないところにゃ、見張りを置く気はないって事か……?
え〜っと、宝物庫は……こっちか。
……こっちも人いねぇってな……
これって盗みまくり何じゃ?
ま、ハーブランドの国民全員で宝物庫の中から捜し物をすると最低2年はかかるって言うのも
わかる気がするや……
だってここの宝物庫、一つの大きさが……縦500m横300m高さは……10m弱か?
これが8つもありゃね……
しかも捨てる場所を探さなきゃいけないくらいに一杯って事は……
ここに何か、目的のものがあって忍び込むような奴はいないって事じゃ?
絶対に普通の盗賊なんかじゃ見つけられないよ。
いくら見張りがいなくても、ここから一つのものを人知れず盗み出すよりは、
カエルを一匹見つけだすほうがよっぽど楽だろうなぁ……
しっかし!ボクには七大秘宝探索気が……今0.5秒で作った。
これで探せば……

――ピコーン……ピコーン……ピコーン……

おっと……こっちか。

――ピコーン……ピコーンピコーンピコーン

え〜っと、3番目の宝物庫の中みたいだね。

――ピコン、ピコン、ピコン

反応がだんだん近くなってる……
もう少しで見つかるはずだ。

――ピコピコピコピコ

お?反応が最大に……この辺りのはずなんだけど……
え〜っと?あ、この箱かな?
よっ……と、思ったより蓋が重いな……あっ!

――パンパカパ〜ン!オメデトウゴザイマス!!

誰だぁ〜!?音声データ入れた奴は!?
ったく……ここが警備されてたらつかまっちまうじゃんか。
まあ、いなかったんだしいいとて……
「楽園の小枝」はボクが獲得!!

――ひゅるるるぅぅぅ……ピコピコ

おっと、小型空中浮遊型強奪専用自立稼動機『横取り君』じゃないか。
帰ってきたね、お帰り。
ちゃんとヒソップからラキアの瞳を盗ってきたかい?
ああ、ちゃんと持ってるね。
これで5つめ。残りは2つか……
後の2つは……あ、そう言えばチャービルが一つ持ってたな。
倒したっていいんだけど……
何か、連続して出て来てる分、憎めないな……
ちょいと交渉してみるかな?


と言うことでサボリー鉱山。
今はここにいるはずなんだけど……?
呼んでみるか。お〜い!!チャ〜ビルゥ〜!!

「おやぁ〜?珍し〜ね〜。君がおじちゃんを訪ねて来てくれるな〜んて」

……いつものは故意的にお前に逢ってるんじゃない解かってるんかぃ!!
まあいい。あのさ、お前「大地の背骨」って持ってるよな。

「持ってるよ〜、おじちゃん首しかないけど〜な〜ぜか持ってるんだなぁ〜」

どうやって持ってるかなんてんな事どうでもいいって。
取り敢えず……そうだな。1ヶ月ばかし貸してくれ。

「そ〜だね〜?君とオレとの中だもんね〜?」

担保を置いてくって。あ、なんなら借り代も出そうか?

「な〜にくれるのかな〜?それによってはか〜すよ?」

うん、まずは借り代だけど……
こいつでどうだ!?
キャラウェイの危ない水着写真!!

「う〜ん、あの娘は身体はい〜んだけどねぇ〜。オレがかけた呪いのカメンがジャ〜マかな〜?」

心配するな。本人にそう言う写真撮らせてくれというような勇気はボクにはない。
これは限りなく本物に近い合成だ。
顔の部分は、ボクが作った金属透視装置で写真を撮ったのを使ってあるから生身だ。
なおかつ微笑んでいるんだぞ。
危ない水着で仮面は取り外され、そして微笑んでいるキャラウェイの写真……いらないか?

「い〜ねい〜ね〜!!こ〜れが借り代なら、タンポは〜?」

へへ〜ん、『とても口では言えないようなもの』だ!!

「な〜んだよ〜?気〜になるじゃないか〜」

んじゃチラッとだけ見せようか……

「……!!1ヶ月過ぎたらこれもらってい〜んだね〜?」

もちろんさ。んじゃ、貸してくれるんだな?

「貸すよ貸すよ〜、できたらオーバーしてくれると嬉し〜んだけどなぁ〜」

よし、商談成立っと!!


ということで……
残りの一つ、「太陽の卵」を手に入れるために……現在人魚の島。
イベントを入れ替えたから、人魚の島関係のイベントはほとんどが後ろに回ってるし。
さて、さっさとニゲラ王子を倒すかな?
にしても……何でリンデンとマグワートはマレインとキャラウェイを連れて来てるのかな……?
いや、負けることも怪我をすることもないだろうけど……
戦いにくいしね。
さて、さっさとニゲラを倒して卵を取ろう!

「うん、そうだね。じゃあ、せっかくだから移動のサイコロ2つ増やすよ」

フッ……気遣い無用!!
1ターン目からニゲラと戦う!!

――ヒュン!!

「もしゃもしゃ……んあ!?なんだなんだ!?」

やぁ、卵を奪いに来たよ。ご機嫌いかがお過ごしかな、ニゲラ王子?

「突然現れて無礼な宇宙人が……この半魚人界の若きプリンス、ニゲラ王子に叶うと思ってるのか?」

お前のほうこそ、今から相手が責めてくるって時にのんきに飯喰ってんじゃねぇ〜!!
それも、さっき入り口で偉そうに口上垂れてなかったか!?

「さっきの、偽物だったんじゃないのかな?」
「あれは私本人だ!!」
「へぇ〜、半魚人も『本人』って言うんだ」

これはボクも知らなかったな……
まあいいや。さっさと飯喰えよ。この状況じゃ戦うに戦えないからな。

「うむ……しばし待ってろ!!」
「でもさ、いくら半魚人だからって、焼魚とマグロの山掛けに海草って……?」
「我々の主食だ。ま、下衆な地上人には解らんだろうがな……なぬ!?卵だと!?」

遅いっての……

「やっぱり、アンタみたいな感覚の鈍い人の所に卵は置いておけないよ」
「む……ならば、この私を捕まえることだ!!言っておくが、この半魚人界の若きプリンス、ニゲラ王子様は……」

運動会で1位なんだっけ?
対戦相手がカニやらカメ程度の、1位が当然な運動会の。

「う……それだけじゃないぞ!海で一番早く泳ぐ……」

マグロの次の次の半分くらいだっけ?
主に水中で生活してる割りに泳ぐの遅いんだな。

「うぅ……ならば、宇宙人のお前はどれだけの速さで泳げると言うのだ!!」

平均してマグロの倍かな?
瞬間最大速度は100ノットまでなら出せると思うけど?

「それって……道具使わないで?」

まさか。ジェットを背負うよ。

「これだから宇宙人は……浅ましいのが多すぎる」

そりゃ偏見って奴だよ。
まったく……大体、ジェットのハンデくらいいいじゃんか……

「あ、じゃあ泳げないって噂は本当だったんだ」
「ゲヒャヒャヒャ!!何だなんだ?自力じゃ泳げんのか!?
 仕方ないな……ここはこのニゲラ王子様がお前に特別に水泳と言うものを教えてやろうではないか!!」

で〜い!勝手にいろいろ言うな!!
いっとくけど泳ぐことはできるわぃ!
ただ、息継ぎが下手なんだよ!!

「では、お遊びはこの辺にして……話が半魚人王家に伝わる伝説の槍、トライデント……
 これでお前の人生に終りを捧げてやろうではないか!
 ああ、心配しなくてもちゃんと宇宙人の研究をしている機関に運んでやるぞ」

やれやれ……人の話をまったく聞かない奴だな。
ボクは泳げるっての!!

「そこに突っ込み直すの?」

……気にしないでくれ。
しかし、取り敢えずは本当に王家の物だったんだな。
代々伝わる武器なんかがあるってことは。

「誰が物だ!この私から溢れ出る高貴なオーラが……
そうか、下賎の者には見えんのか!ゲヒャヒャヒャ!!」
「ボク、高貴なオーラなんかが出てる人はそんな笑い方しないと思うな……」

チコリに同じ。
その上、お前の場合じゃ『溢れ出る』っつーよりも『滲み出てくる』方があってねぇか?
その下品なオーラは。

「うぬぬ……そんな寝言は、解体されてホルマリン漬けになってから言うがいい!!」

ほう、ボクに刃向かえるもんならやってみろよ。
あ、チコリ。
ボクが持ってきた袋の中に紙が入ってるから、その指示通りに袋の中身を加工して。

「え?この袋のこと?」

そうそう。頼んだよ。
んじゃ、始めようか?キミがどれだけ弱いかを試す儀式をさ。

「うがぁ〜!!黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがってぇ!!
 喰らえぇ〜!ビッグウェーブ!!」

へぇ、突然平坦だった海面が盛り上がって津波の準備ができたね。
それをボクに落とす気なのかな?

「そうだ!!これを喰らえば泳ぎの弱い地上人共は生きてられんわ!
 私に逆らったことをホルマリンの中で悔やむのだ!!」

そんな水の塊くらい……

――ピュン…………バッシャャャャャン!!!

ボクが解除できないと思ったかな?
まったく……これだから魚って奴は……

「な……波が……え〜い!!もう一度!!」

無駄だよ。もうその水はキミの力じゃ動かないさ。
……まぁ、これだけの力の差を見ても引かないその意気は誉めてやろうか?
ああ、魚にはそんな力の差がありすぎるからって引くことを考えるくらいの頭はないんだね。

「無知って恐いよね。やっぱりニゲラ王子に「太陽の卵」は持たせられないよ」
「す……好き勝手に……」

あ、チコリ。取り敢えずできたかい?

「うん。けど……これ何……?何に使うの?」
「何だその……ちょっと大きめの四角い子供用プールと……?」
「発泡スチロールの板……?」
「シャーレのバカでっかい物もあるが……?」

あ、あと袋の中に四角い箱が入ってなかった?

「うん、あったけど……これも何?」

箱を開けたら解かると思うよ。

「ふ〜ん……何が入ってるんだろ……」
「どれどれ……メス?」
「鉗子と……出刃包丁……?」
「この変な形のは……鱗取りのようだな……」
「あの〜、これってもしかして……」

ん?そんな引かなくてもいいじゃないか。
確かにボクら宇宙人は、キャトルミューティレーションで家畜の内蔵を抜き取ったりして、
この星の生態を調べているけど……
これはそんな理由じゃないから。

「……何となく嫌な予感がするんだけど……?」
「汗たら〜りマーク出現……」

半魚人の生態って調べた人いないから、どうせだから解剖しようかなって思ったんだ。
今回は内蔵だけ取り出すよりも、証拠を残さないように全部持ってこうと考えてるから。
で、体細胞の必要なのはほんの少しでいいから、残りは捌いてこれに盛り付けようかと……

「何だ?この木製の小船は」
「なんて言うか……小型ネプチョン号?」

活け造りの刺身はこういうものに乗っかってるのが正しいからね。
刺身って言うと、こう恰好のものしか思い浮かばない人だっているし。
半魚人を所望しているあの人たちにはこの恰好のほうがいいと思ったんだ。

「それってつまり……」
「このニゲラ王子を食べてしまおうと言うのか!?」

あ、ボクは刺身では食べないよ。
キミなんか生で食べたら絶対に寄生虫にやられそうだもん。
やっぱり魚は焼くに限るでしょ?

「ウギョ〜!?寄るな触るな〜!!」
「あのぉ……悠耶さん?本気で食べるの?」

……さて、何処まで本気だと思う?

「目に狂気の光が映ってるような気がするんですけど……?」

気にちゃいけないな……
あ、できたら目と耳を塞いでおいたほうがいいよ。

「……そうさせていただきます!!」

さて……ニゲラ君。覚悟はできたかな……?


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