チコリを我が手に!!・後編(臙龍悠耶さん・作)

――ギョエェェェェェェ!!!

「何だぁ?今の魚が首切られたような声は?」
「王子様、魚は喋りませんが?」
「……いや、半魚人の間違いだ。にしても……誰かがニゲラを倒したのか?」
「もしそうならば、「太陽の卵」を持っているものを倒しましょう。それがほかの王子様であっても」
「止められたってそうするがな……しかし楽しそうだな、キャラウェイ。俺が一緒にいるからか?」
「……お戯れはお止しください、それより、向こうから誰か来ます」
「それでですね……」
「ああ、たぶんそうだろな。ん?王子!!」
「何ですか、マレインさん?」
「おっと、誰かと思えばリンデンか」
「マグワート兄さん……ちょうどいいところであったね」
「ほう、そいつは奇遇だな。俺もお前に用事があったんだ」

――チャッ……
――ガシッ……

「同じ目的みたいですね?」
「俺と同じく武器を構えるなら……そのようだな……」


え〜っと……どっかこの辺に隠してあると思うんだけど……?
まったく、魚の癖に……一人前に宝を隠すなっての……

「えっと……悠耶さん?これ……本当に食べるの?」

今は食べないけど……あ、そう言えば、何でさっきからボクに「さん」をつけるの?

「いや、その……怒らせると恐そうで……」

別に怒らないよ。普通に呼んでくれたほうが嬉しいって。

「そ、そう……?じゃぁ……悠耶、『今は』って事は、後から食べるの?」

まだ考え中だけど……
どうせだから、今はまな板の上の故意を通り越して盛り船の上のニゲラになったこいつに現在の心境を聞いてみようか?
さてニゲラ君。現在の心境は?

「……すみましぇんでした……あの……よろしければ、身体を元に戻していただけないでしょうか?
 二度とあなたの前には顔どころか背ビレも尾ビレも胸ビレだって出しませんので……」

え〜?だって別に身体痛くないだろ?
魚って痛覚無いんだってね。
だから内蔵さえ傷つかなきゃ筋肉無くなっても少しは泳げるって言うけど……
それも面白いかな……?

「………………!!」
「あ、ニゲラ王子が声にならない叫び声を上げて……気絶した……」

ちぇ〜、面白くないな……
まあいいや。とにかく、「太陽の卵」を探さないと……


「いいお天気ですわね……」
「確かにそうなんだけどさ……そろそろ先に進まないか?」
「こんなジメジメしたところ、私は入りたくありませんわ。それより……
 今日はとても身体の調子が良いんですの。
 水着を持ってきていれば、ケロケロ病にかかったときに身に付けました本物の平泳ぎと言うものをお目にかけましたのに……」
「あ、あはは……(何で俺は、今週の冒険にほかの娘を誘わなかったんだろか……)」


「ほう、いつの間にか腕を上げたな……」
「はぁ、はぁ……いつまでも、兄さんたちの、後を追ってた、ボクだと、思わないでくださいよ……」
「王子、息が切れてるぜ。ここは俺が……」
「王子様、腕の火傷の治療を御早く。ここは私が押さえますゆえに……」
「へっ……互いに女性に任せてりゃしょうがねぇな……」
「これは、一時的なもの、です。すぐにでも、決着をつけますよ」
「そいつは、楽しみだな……」


おっかしいなぁ……何処にもないぞ?
ニゲラ!!お前いったい何処に「太陽の卵」隠したんだよ!

「駄目だよ悠耶。今ニゲラ王子、絶対安静なんだから。
 ほら、エラに酸素マスクつけてる状態なんだよ」

ちっ……まったく……
ん?なんか向こうが光ってるような……
ちょっと見てくるか……。ニゲラを頼むよ。

「あ、うん。解かったよ」

え〜っと、確かこの辺……
あ、あれかな……
お?この丸いのは……間違いない!「太陽の卵」だ!
よし、せっかく見つけたんだ。ここにほかの七大秘宝も置いて……
まとめて見つけたように見せかけて一気にボクのポイントを上げよ〜っと!
そうと決まればこの前亜空間に隠した残りの秘宝をここに置かなきゃ……


「…………すうすう…………」
「やれやれ……結局洞窟に入らないうちに寝ちまったか……
 しっかし暇だな……ちょっとこの辺を散歩するか。
 回りには魔物はいないし……一人にしておいても問題ないだろ」

――サクサク……

「あ〜、誰もいない海岸っていいなぁ〜
 あれ?なんだあれは……?
 なんか丸いのがたくさんあるけど……蟻地獄か?
 なんか怪しいな……あ、そうだ。
 さっきアニスからもらった魔王の剣でも投げ入れるかな……
 なんともなけりゃ地面に刺さるだけだろうし、何かあるならそれを倒すだろうからな。
 よし……とりゃぁ!!」

――ピシュ〜〜ン

「……剣が……吸い込まれてった……?いったい何処にいったんだろう……」


「くっ……いい加減に……認めてくださいよ……」
「それを言うなら、お前のほうもな……」
「大体兄さんが悪いんですよ!勝手にボクのおやつを食べるなんて!!」
「ならお前は俺が大事にしているフィギュアを壊しただろうが!」
「あれはボクじゃないって何回言ったら解かるんですか!その仕返しにって、ボクの一番好きなプリンアラモードを狙って食べるなんてひどすぎます!」
「いい加減に認めろよな……力で俺に叶うわけねぇんだからさ……」
「うぅ……」

――ビュン!!

「王子様!!」
「王子、危ねぇ!」

――カシャーン!!

「うわぁっ!!」
「なんだ!?」

――ピシュ〜〜ン

「あ、弾き飛ばされた俺の剣が……」
「今の……あ、魔王の剣ですよ。いったい何処から……?」
「それより、俺の剣はいったい何処に行ったんだ……?」


よし、これで全部だし……
後はいかにも、今見つけたという演技をしなきゃね。
それじゃあ……

――ザシュッ!!

グハッ!?剣が首を切り落とすような角度で刺さってるぅ〜!?
もしかしてニゲラ王子が……?って、んなわきゃ無いな……
この剣、いったい何処から飛んできたんだ?
あ、名前が書いてある……「マグワート様の聖剣」……ガキかあいつは……?
大体マグワートはもっと向こうだろ?
何でこんなところに剣が……
ん?まさか……えっと、ボクがこの向きで立っていて、剣はこの角度で刺さって……
その丁度まっすぐな延長線上には……?
あっちゃぁ〜、ワープホールがある……
マグワートが何処にいるか知らないけど、おそらくホールのダミーの近くにいて、そのホールにあいつの剣が飛びこんで来たんだろうな……
まったく、傍迷惑な奴だ。
さて、傷は塞いでさっさとチコリにこの七大秘宝を見せなきゃ……

「今日こそ決着をつけるぞ、チコリ!」

ん?この声は……?

「毎回毎回、七大秘宝を探しに行くときばっかりボクの回りに……
 あんまりしつこいと商売敵から恨まれるよ、ヒソップ!」

まてまてまて〜!!
ヒソップ!お前動けるのか!?

「……変な円盤みたいなものに後頭部を殴られてな……
 気がついたら半魚人の恰好をしていた。でふと気がついた時にチコリがいたんでな……
 思わず勝負をかけてしまったと言うわけだ」

とんでもねぇ理由……
ま、チコリと勝負すると言うことはボクと勝負するって事だな。
返り討ちにしてやるよ!

「おっと、その前に口を開けてくれないか?」

ん?別にいいが……パカッ

「うわっ……腹話術の人形みたい……」
「ほれっ!」

うぐっ!?おまえ、何喰わせた!?

「いや、某国の科学研究チームからの以来があってな。
 宇宙人にマーカーを埋め込んでほしいと言われて取り敢えずお前に飲ませたわけだ」

マーカーって事は……

「そこから電波が出ているな。
 そして向こうはその電波をキャッチしてお前の居場所を……」

うっわぁぁぁ!!
こうしちゃいられない、早く逃げないと!!

――シュン!

「あ、悠耶が消えた!」
「それでは改めて勝負だチコリ!」
「ちょっとまって、さっき悠耶は向こうで何を……あ、これって……」
「七大秘宝!?しかも私の持っていた「ラキアの瞳」まで……すべてそろってる」
「やった……これで母さんを起こせる……」
「母親?」
「うん、妖精の森で、ボクを生んでからずっと寝ているのんきな母さんさ」
「それは……いや、チコリ」
「なんだい?改めて七大秘宝をかけて勝負する?」
「いや、この秘宝、すべてお前にやろう」


はい、予定よりもとんでもない早さでチコリのお母さんは眠りより覚めました。
あ〜あ、今回はいったい何しに行ったんだろう……
そりゃぁさ、ほかの王子がチコリに対してポイントを上げてないだけマシかも知れないけど……
ボクはくたびれ損の上に払い損じゃ無いか……
あ〜あ、マーカー除去の手術をしてたら1ヶ月過ぎちゃったし……
これで担保がチャービルの所に行ったわけか……
はぁ……もったいない……
ま、どっかの組織とかに回収されずにすんだだけマシかな……

――バサッ!

な、なんだこの投網は!?

「教授!捕まえました!!」
「うむ、逃げられぬように急いで電気ショックを!」

――バチッ!

うぎゃっ!?痛ったいな!!
お前らいったい何者だよ!

「お前が知ったことじゃない。ただ私たちは、ここに宇宙人がいると言う有力な情報をもとにここまで来ただけだ」
「その結果、本当にいたんだしな……あの女性には感謝せねばならないだろう」

女性?どんな人だよ。

「えっと、仮面をつけた騎士風の人だった」
「そうそう、青い髪の、顔の解からない女性だ」

それって……キャラウェイ!?

「や〜あやあ、元気〜?」

あ、チャービル?
いったいなんだよ、今立て込んでるから後に……

「ご〜めんね〜、あの『とても口では言えないようなもの』、キャ〜ラウェイちゃんに見つかっちゃったよ」

なにぃ!?
で、なんでキミは生きてるのかな〜?

「だからさぁ、あんなにユーレイに弱い娘が、ほ〜んきでオレに向かってきちゃったんだよ〜
 思わず『ユウヤからもらった』って言〜ったんだけど〜」

このアホ〜!!
この学者たち、キャラウェイの差し金じゃねーか!!

「オレし〜らないっと〜」

あ、こらまて!!

「で、教授。この宇宙人は私たちで研究を?」
「それもいいかと思ったが、高値で買い取ってくれるところがあるんでそっちに売ることにした」
「あ、某国の宇宙開発事業ですか?」
「いやいや、ハーブランドの……たしかアーティチョークとか言う家だ」

……ちょっとまて、それって……
カモミールの家じゃねーか!!
冗談じゃねぇ!
あんな生身の人間すら実験台にするようなやつの所に連れてかれてたまるか!!
逃げ延びてやるぅ〜!!

「あ!!宇宙人が逃げる!」
「みんな!追いかけるぞ!!あいつを捕まえればボーナスが出せる!!」
『ウオォォォォォ!!』

うわぁ〜!!捕まりたくなぃ〜!!
ちっくしょう……しばらく身を潜めて……
今度は誰を狙おうか……
あぁ……でもなぁ……そろそろハーブランドも宇宙人が住みにくくなってきたし……
何処か新しい世界に旅立とうかな……
取り敢えず……この危機を脱することができたら!!

 

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