マルノ・カッポン今昔物語・5


「ここか!!サルマルノ!!」
バンッ!と勢いよく赤い扉を開くと、サルマルノ達は巨大な大砲をえっちらおっちらと
セッティングしていたところでマルノ。
「なっ!!なんでこんなに早く…!?」
サルマルノは戸惑いを隠しきれない様子でマルノ
「あ、魔女マルノ!?どうしてここに…」
「オオカミマルノ、お前まで…!」
人魚姫マルノとじじマルノが口々に叫びマルノ。
「そ、そんなことより、お前ら…鬼マルノ達はどうしたんでマルノ!!」
魔女マルノが慌てながら尋ねると、
「ふふん、鬼マルノ達は女神さマルノにすっかり魅了されたでマルノ!」
おじさマルノがそう言って鼻を鳴らしマルノ。
「しょ、しょんな…」
呆然とする三人。その前でじじマルノはさっきの鬼マルノから受け取った刀を構えマルノ。
「うわっ!!タタタタ…タンマッ!」
「ワシの大事なばばマルノを酷い目にあわせたお返しでマルノ!!」
有無を言わさずじじマルノはサルマルノに斬りかかりマルノ。その時、刀がまぶしく発光しマルノ。
「そんなぁ!!せめて発砲の準備が出来るまでまってぇぇ!!」
光はその叫びごと三人を飲み込まれマルノ……。


じじマルノ達も、刀から発せられた眩しい光に目を堅くつぶりマルノ。
――しばらくして、赤ん坊の鳴き声が聞こえてくるのに気付いた一行は、そっと目を開けマルノ。
すると、そこには3人の赤ん坊マルノがいて、おぎゃマルノおぎゃマルノと泣いていマルノ。
「これは…どういうことでマルノ…?」
「ん……?あっ!!じじマルノ、あんた…!!」
おじさマルノが刀を握りしめたまま呆然としているじじマルノをみて驚愕しマルノ。
「はっ?わしがどうかしマルノ??」
「かっ…か…鏡…どうぞ…」
人魚姫マルノも目を点にしながらおずおずとポケットミラーを取りだしマルノ。
「ん〜…な、何ぃ!?」
じじマルノは鏡に映った自分の姿に腰をぬかさんばかりに驚きマルノ。
そこには…自分の青年時代の若々しい姿が映っていたのでマルノ。
「ななななな…」
「も、もしや…この刀は…!」
女神マルノがじじマルノが握っている刀をもう一度よく見マルノ。
「やはり!!これは、“ウマレカワレ〜ロ”でマルノ!!」
「は?なんでマルノ?その一昔前の安達●実のようなネーミングは…」
「そんなマニアックなネタ、誰も覚えてないでマルノ!ネーミングはどうでもいいのでマルノ、
この刀はどうしようもない悪人に使うと、そやつを赤ん坊にしてしまうのでマルノ。
そう、真っ白な心の赤ん坊に戻し、人生を再スタートさせ一から更正させる…これは究極の
正義の宝刀なのでマルノ」
「なるほど、だからこいつらは赤ん坊に…しかし、何故わしは若返ってしまったのでマルノ?」
「この刀は、誰にでも使えるというわけではありません。選ばれた人間にしか使えないのでマルノ。
じじマルノさん…あなたはおそらく桃太郎の血を引きし者……きっと、桃太郎はこれを
忘れていったのではなく、置いていったのでマルノ。いつかまた、自分の子孫がここへ来ることを
確信して……そしてあなたが若返ったのは、刀が…いいえ、桃太郎マルノが…この赤ん坊たちを
正しい心の持ち主へと育てるのに十分な時間を与えてくれたからに違いありません」
女神さマルノはそう言って微笑みマルノ。
「し、しかし…ワシ…いや、ワタシ一人ではとても…」
じじマルノは戸惑いを隠しきれない様子でマルノ。しかし、女神さマルノは首を横に振りマルノ。
「大丈夫、あなたなら出来マルノ。それに、あなたは一人ではないでしょう?」
「――!」
女神さマルノの言葉に、人魚姫マルノとおじさマルノも頷きマルノ。
「そうでマルノ、わたしたちも力を貸しマルノ!」
「困ったときはいつでも呼んでくれでマルノ」
「おお…みんな…」
じじマルノは短い時間で親友となった仲間たちの暖かい言葉に、感動の涙を流しマルノ。
その時、
「じじマルノ!!」
聞き覚えのある声。じじマルノは驚いて振り返りマルノ。すると、そこには結婚したばかりの頃の
姿をしたばばマルノが立っていマルノ。
「ばばマルノ!どうしてここに…いや、それよりその姿は…!?」
「さっき急に気分が良くなって…ケガもすっかり治りマルノ。そして、いきなり辺りが輝いて ……
気付いたらここにいたのでマルノ…そしてそこの水鏡に映った自分の姿が…これは
どういうことなんでマルノ!?……えっ!!?じじマルノ…!!あんたもなのでマルノ!?
あっ、そういえばここは何処なのでマルノ!?」
混乱しているらしいばばマルノの言葉は支離滅裂でマルノ。
――なるほど、夫婦一緒ならどんな苦難も乗り越えられるだろう、ということか…桃太郎マルノよ、
お前はどうあってもワシらにこの子達を育てろと言いたいらしいでマルノ……――
じじマルノは小さく苦笑すると、ばばマルノに順を追って話し始めマルノ……。


「ははは…ほらほら、こっちだオオカミマルノ」
「こら、サルマルノ!ツノを引っ張るんじゃないでマルノ!」
「さぁ魔女マルノ、おしめを取り替えてあげマルノ」  
あれから数カ月が過ぎマルノ。じじマルノとばばマルノはは鬼マルノ達の好意で 城に住まわせて
もらっていマルノ。狭くて古いじじマルノの家では三人の赤ん坊マルノ達も のびのび育てないだろう、
とボスの鬼マルノが気を遣って申し出てくれたのでマルノ。 その意見に他の鬼マルノ達も大賛成
しマルノ。そう、鬼マルノ達は、乱暴者ではあったけど 根はいい奴らだったのでマルノ。
女神さマルノも、鬼マルノたちにつきまとわれて多少迷惑そうではあったけど、 やはり頻繁に様子を
見に来てくれマルノ。そして人魚姫マルノと人形職人おじさマルノの親子も 城の一室を借りて、
人魚姫マルノは針仕事、おじさマルノは当然人形作りと、それぞれの 仕事をしながらじじマルノ達を
サポートしてくれマルノ。鬼マルノ達は子供達の遊び相手になってくれマルノ。子供が出来ず、
子育ての経験が今まで無かったじじマルノとばばマルノだったけれど、 皆に支えられながら
三人の赤ん坊マルノ達を順調に育てていったのでマルノ。


「ばばマルノ……辛いかい?」
一息ついて、テラスで風に当たっていたじじマルノは、傍らのばばマルノに微笑みながら尋ねマルノ。
ばばマルノは静かに首を振って答えマルノ。
「いいえ、みんながいてくれるし…あなたもいマルノ…それに、 子供達はとても可愛いでマルノ…
わたし、ずっと子供を持つことに憧れてたんでマルノ……だから、確かに大変だけどちっとも
つらくなんかないでマルノ♪」
「…そうかい?…ふふ、でも実はワタシもなのでマルノ」
「まぁ、やっぱり!」
ばばマルノは可笑しそうに笑いマルノ。すると、じじマルノは急に真剣な眼差しになり、
ばばマルノをジッと見つめマルノ。
「…ど、どうしマルノ?じじマルノ…」
「もう、“じじマルノ”は止めマルノ。ワタシもお前もこんなに若くなったのでマルノ、
いつまでもじじマルノ、ばばマルノでは変でマルノ」
「そ、そうね。でもどう呼べばいいのでマルノ…?」
「…また、昔のように……」
じじマルノは少し照れくさそうに目をそらして言いマルノ。
ばばマルノも頬を染め、俯いたけれど、すぐ顔を上げて囁くように言いマルノ。
「……ダーリン…(ぽっ)」
「…は、ハニー…」
じじマルノ――いや、青年マルノも数十年ぶりに口にする言葉に戸惑いを隠しきれない様子でマルノ。
二人はその後はもう何も言わず、ただ肩を寄せ合い、目を閉じていマルノ。
――子供達と一緒に、ワタシたちも一から再スタートしよう…!――
確かな誓いを胸に抱きながら……。

   

完でマルノ。

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